様々なホームページ上で散見される「インプラント駆け込み寺」あるいは「インプラント・レスキュー・センター」なる言葉は、好きではありません。
多くの患者さんに満足いただける治療法として、世界的にも評価されています今日のインプラント療法の基礎を確立されたスウェーデンのブローネマルク教授から直々にお教えいただき、日本に紹介してから33年が経過しました。当時は、多くの歯科大学でその方法が懐疑的に捉えられていましたが、今日ではすべての歯科大学で教育に取り入れられて、歯科医師国家試験問題にも含まれるようになりました。街を歩きますと、「インプラント」と記されている歯科医院の看板を目にしない日はないほどに普及してまいりました。そのことにより、多くの患者さんがご自身の歯が健在であった時と同じように生活を満喫されていることは、嬉しい限りです。
その反面、治療を受けられたことに後悔されるような問題点を抱えた患者さんを他院からご紹介いただく機会が増してまいりました。私は長年にわたりインプラント療法に携わってまいりましたが、すべての患者さんにその治療法が最適だとは思ったことはありません。しかしながら、その方法を薦められ、成り行きにより結果的にその治療法が適用されることもあるでしょう。良好であれば結果的にはよろしいでしょうが、問題が起こった場合には患者さんの期待を裏切ることになります。例えば、「この治療法は一生持ちます。」といった言葉を信じて治療を受けたものの、短期間で問題を起こしたにもかかわらず、責任を持っての再治療を拒まれた患者さんもいらっしゃいます。
使いたくない言葉として、「インプラント難民」があります。問題を抱えても、治療を受けた施設では取り合っていただけないと、どこに相談したらいいのか分からないのが現実でしょう。方法も異なり、私が施術したものでなくとも、そのように悩まれていらっしゃる患者さんの相談相手になることは、わが国にインプラントを紹介した者の責務と考えています。「火中の栗を拾うのは止めろ。」と諭されたこともあります。でも、悩まれていることがありましたら、お気軽にご連絡ください。でき得る限りのことはしたいと考えています。
このような文章が世に出ますと、一部の歯科医師からは反発があるかもしれません。他の歯科医療従事者を貶めるものではなく、自分が良い人間を装うためものでもありません。それだけはご理解ください。
2016年2月25日 文責 小宮山 彌太郎